相続財産の調査とは

相続財産の調査とは、どこにどれだけ被相続人の財産があるかを明らかにすることです。
相続財産の中には、不動産や預貯金のようなプラスの財産だけではなく、借金のようなマイナスの財産も含まれます。
調査をすることで、単純承認や相続放棄など相続の方法を決定する際に重要な役割を果たしますし、遺産分割協議をする際も正確に行うことができます。
亡くなられてから時間が経つほど相続財産の把握は難しくなります。また、相続放棄など一部の手続きには期間の制限もあります。
できるだけ早い時期に着手した方がよいでしょう。

①不動産の保有状況調査

②預貯金、有価証券の保有状況調査

③銀行の貸金庫に相続財産がある場合

④相続債務の有無の調査

⑤相続財産の中に賃貸物件がある場合

⑥相続財産の中に賃借物件がある場合

⑦相続財産の中に農地が含まれる場合

⑧相続財産の中にゴルフ会員権が含まれる場合

不動産の保有状況調査

①法務局での調査

被相続人が所有していたと思われる不動産がどこにあるのかある程度分かっている場合、法務局でその不動産の権利関係を確認できます。そのためには、登記事項要約書もしくは登記事項証明書の交付を請求します。

ア)登記事項要約書

  • 不動産の所在事項、現在の所有者、現在の権利関係で主なものが記載されています。
  • 登記官の認証文や作成年月日は記載さません。
  • 不動産の所在地を管轄する法務局へ行く必要があります。
  • 1通500円(5枚を超える場合には、以後5枚ごとに100円加算)。

 

イ)登記事項証明書

  • 登記記録に記録されている事項の全部または一部を証明した書面です。
  • 現在有効な権利関係だけではなく過去の権利関係の記載もあります。
  • 登記官の認証文や作成年月日も記載されます。
  • 管轄外の法務局に請求することも可能です。
  • 請求書を法務局に直接持参する方法、郵送で請求する方法、オンラインで請求する方法があります。
  • 1通700円(直接持参または郵送の場合)
  • 1通550円(オンラインで請求し法務局で受け取る場合)
  • 1通570円(オンラインで請求し郵送で受け取る場合)
  • いずれの場合も1通の枚数が50枚を超える場合には、以後50枚ごとに100円加算。

どちらの場合も不動産の地番や家屋番号を把握しておく必要があります。登記簿上の土地・建物の地番・家屋番号は住居表示とは異なるためです。登記済証(権利証)等があればそれで確認できますが、ない場合は登記所に備え付けられた地図等で確認することができます。


②市区町村役場や都税事務所等での調査

ア)名寄帳

  • 市区町村には、土地・家屋について、固定資産課税台帳に基づき作成される名寄帳があります。
  • 名寄帳には、納税義務者の所有する土地や建物の一覧が記載されています。
  • 原則として納税義務者本人しか請求できませんが、相続人も相続を確認できる書類を添付すれば請求可能です。
  • 名寄帳には法人名義の不動産は記載されません。
  • 費用は市区町村の定めるところによります。

 

イ)固定資産評価証明書

  • 相続税や登録免許税の額を算定する際に固定資産評価証明書を用意する必要があります。
  • 相続人が請求する場合は、相続人であることを確認できる書類と申請者の本人確認ができるもの(運転免許証等)を添付する必要があります。
  • 費用は市区町村の定めるところによります。

評価額は、市街地にある宅地等では路線価方式(国税局長が道路ごとに1平方メートル当たりの価額を定めた路線価により評価するもの)により、路線価方式が適用されない郊外では倍率方式(固定資産評価額×評価倍率)により評価します。
建物は、固定資産評価額がそのまま評価額になります。

不動産の価格の種類

不動産の価格の設定には以下のような種類があります。

①公示地価

地価公示法に基づき、国土交通省が調べる1月1日における標準地の正常な価格を公示するもので、3月下旬に公表されます。

  • 一般的な土地取引の指標や公共事業用地の取得価格算定の基準とされ、適正な地価の形成に寄与することを目的としています。

 

②基準地価

国土利用計画法施行令第9条の規定に基づき、都道府県知事が7月1日時点の基準地の標準価格(基準地価格)を判定するもので、9月下旬に公表されます。

  • 国土利用計画法の規定に基づき、土地取引の価格規制を行う場合の審査において、地価公示価格とともに相当の価格を判断する際の基準として使用されます。
  • 基準地価を公表することによって、一般の土地の取引価格の指標としても利用されています。

 

③路線価

路線価とは、道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことです。国税庁が1月1日時点の価額を毎年調査し、7月に公表され、おおむね公示地価の8割程度です。

  • 路線価が定められている地域の土地等を評価する場合に用いられ、その地域の土地の相続、遺贈又は贈与に係る相続税及び贈与税を評価する場合に適用されます(路線価方式)。

 

④固定資産税評価額

固定資産税評価額とは、市町村などの税務課にある固定資産課税台帳に登録してある土地や建物の評価額のことで、市町村などが調べる1月1日時点の価額で、原則3年に1回見直され、おおむね公示地価の7割程度です。
固定資産税評価額は、次のような税金を計算するときに使います。

  • 固定資産税や都市計画税の税額
  • 不動産取得税や登録免許税の税額
  • 相続税や贈与税を計算するときの建物の評価額
  • 路線価が定められていない地域の土地に係る相続税や贈与税を計算するときの土地の評価額(倍率方式)

預貯金、有価証券の保有状況調査

①預貯金

被相続人の相続税の申告のため、預貯金等の残高を証明する必要があるので、金融機関から相続発生日現在の残高証明書、利息計算書を発行してもらいます。

  • 相続税法により、相続の開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合は、当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算した価額が相続税の課税価格とみなされるため、過去の預貯金の取引履歴を調査する必要があります。
  • 通帳等がある場合には預貯金口座の取引履歴を確認し、通帳等がない場合には金融機関に対して取引履歴証明書を発行してもらいます。
  • 平成16年1月1日以降の贈与にかかる贈与税についての更正等の期間制限が6年間とされているため、過去6年程度の履歴があることが望まれます。

 

②有価証券

  • 複数の証券会社と取引をしている場合もあるので売買報告書や配当金が振り込まれる預金通帳を確認して漏れがないようにします。
  • インターネットで株取引をしていた場合には、インターネット上で株取引を仲介していた証券会社を調べ、この証券会社に問合せをします。

 

③インターネットバンキング

インターネットバンキングを利用していた場合には、ATMを利用するときに使うカードや金融機関からの郵便物等を手掛かりに、当該金融機関に問合せをします。

銀行の貸金庫に相続財産がある場合

貸金庫契約の性質は賃貸借契約であるため、この契約に基づく権利は財産上の権利として相続の対象になります。

①貸金庫の利用

相続人が複数いる場合、貸金庫利用する権利は共同相続人間で準共有されると考えられているので、貸金庫の利用は、共同相続人間で相続人の一部に借主の地位を承継させる旨の合意がある場合を除いて、共同相続人全員で行わなければなりません。
 

②貸金庫の利用停止の申し出

あらかじめ届けられた代理人がいる場合、本人の死亡により代理権は消滅しますが、金融機関は貸金庫の鍵を持っていれば、実際上、貸金庫の利用を拒絶できないようです。
そこで、貸金庫の借主に相続が発生した場合、金融機関にその事実を通知し貸金庫の利用を停止する必要があります。
その後、貸金庫契約の権利義務を承継した相続人全員で貸金庫の相続手続きあるいは解約手続きを行います。

株式の評価方法

株式は亡くなられた日を基準に価値が算出します。
株式は、大きく分けて上場株式、気配相場のある株式、取引相場のない株式の3つに分けられます。
その中でも一般的な上場株式について記載します。
 

上場株式

①から④の中から最も低い価格が評価額となります。
 
   ①死亡した日の終値
   ②死亡月の終値の月平均額
   ③死亡月の前月の終値の月平均額
   ④死亡月の前々月の終値の月平均額
 

証券会社に名義人が亡くなったことを通知するとともに、残高証明を発行してもらいましょう。死亡した日時点の①から④の価格が記載されるかも確認するとよいでしょう。

相続債務の有無の調査

①被相続人の借金

被相続人が金融機関に債務を負っている場合、金銭消費貸借契約書等で契約日、借入金、返済期限等を確認し、また金融機関に対して借入金残高証明書を発行してもらい相続開始時点の債務額を確認します。この証明書は、相続税の申告に際して控除の適用を受ける際の添付書類になります。
 

②被相続人が事業を営んでいた場合

被相続人が取引業者に債務を負っている場合、取引業者から送付される請求書等によってその存在を知るのが一般的です。取引業者に問合せして債務の残高、発生原因等を確認し、不明点がないようにしておきましょう。
相続人には被相続人の事業内容が分からないことが多いことから、取引業者の不合理な主張を認めたり、債務を承認したりして、消滅時効の中断をしたことにならないように注意が必要です。
事業の後継者がいないため廃業する場合も、相続人は相続放棄をしない限り債務を相続することになります。債務を相続する場合には、その返済方法等について、取引業者や金融機関と協議しなければなりません。そこで、廃業通知を取引業者や金融機関に出しておくことで以降の混乱を少なくすることができます。
返済が困難な場合は自己破産や民事再生の申立ても考慮する必要もあるでしょう。

相続財産の中に賃貸物件があるとき

民法896条により、賃貸人の地位は相続によって相続人に承継されます。

相続人が賃貸人の地位を承継しても、賃借人は当然にはそのことを知りません。たまたま大家が亡くなったことを知ることがあるかもしれませんが、そうすると、今後の契約がどうなるのか、賃料の支払いはどうすればよいのか等の不安を生じます。

そのため、新賃貸人が誰であるかを記した賃貸人変更通知書を賃借人に送付する必要があります。その際に、併せて新賃貸人名義の賃貸借契約に書換えるとよいでしょう。ただし、書換えをしなくても、法的には従来の契約関係が新賃貸人と賃借人の間で続いていることになります。


相続人が複数いる場合、遺産分割協議により、賃貸物件の所有権を取得する者が、併せて賃貸人の地位を承継するのが一般的です。なお、相続開始から遺産分割までの間の賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて確定的に取得し、遺産分割の影響を受けないというのが判例ですが、実際には遺産分割協議が成立した段階で、相続開始後それまでの賃料については共同相続人間で清算することになると思われます。

相続が開始したからといって、今までの賃貸借契約が終了するわけではありません。賃貸借契約には賃貸借期間が定められているため、この期間中は原則として賃貸借契約を終了させることはできません。また、賃貸借契約は正当事由がない限り、契約期間が満了した場合でも原則として更新されます。相続人から賃貸借契約の終了を申し入れしたとしても、賃借人はこれに応じる義務はありません。賃借人が申し入れを承諾した場合は合意解約され終了します。相続により共有となった建物の賃貸借契約を共有者から解除する場合には、共有者の過半数で行うことができます。


相続人がいない、または相続人全員(次順位の法定相続人も含む)が相続放棄をしたため賃貸人の地位を相続する者がいなくなった場合、利害関係人(受遺者、相続債権者、遺言執行者等)または検察官は被相続人の住所地または相続開始地の家庭裁判所への申立てにより相続財産管理人が選任されます。以降、この相続財産管理人が賃貸借契約の管理を行います。

相続財産管理人は、保存行為及び、相続財産の性質を変えない範囲内での利用行為と改良を行う権限があります。この権限を超える行為を行う場合は家庭裁判所の許可を要します。

相続財産の中に賃借物件があるとき

民法896条により、賃貸借契約に基づく借地権、借家権は財産権として相続人に相続されます。相続人が借地上の建物、借家に現に居住していたかどうかには関係がなく、また賃貸人の承諾も要しません。

相続人が複数いる場合には、共同相続人の相続分に応じて準共有状態になりますが、遺産分割協議、調停、審判を経て借地権、借家権の最終的な取得者が定められると、その取得者だけが相続開始の時にさかのぼって賃貸人と賃貸借関係に入ります。

賃借人の地位が相続人に相続されても、当然には賃貸人はそのことを知りません。また、賃貸人にとっては、賃借人によって賃料の支払能力などが異なるため、だれが賃借人であるかについて高い関心があります。

そこで、新賃借人が誰であるかを記した賃借人変更通知書を賃貸人に送付する必要があります。その際、新賃借人名義の賃貸借契約書に書換えることが望ましいのですが、書換えをしなくても、法的には当然に賃貸人と新賃借人との間で従来の契約関係が続いていることになります。

賃借人の相続人は、賃貸借契約の定めに従って賃貸借契約を解約することができます。相続人が複数いる場合には、相続人全員が賃貸人に対して解約の意思表示をする必要があります。

相続財産の中に農地が含まれる場合

相続した不動産が農地の場合、宅地などとは違う手続きが必要となります。というのも、農地法の規定により、誰が農地を取得したのか農業委員会で把握する必要があるからです。そのため、農地のある市町村の農業委員会に届出をしなければなりません。この届出には費用はかかりません。

農地を相続したはいいが農業に従事できる者がいない場合などに農地を売却または貸借する際にも手続きが必要となります。売却または貸借する場合には、届出ではなく、農業委員会または都道府県知事の許可が必要です。許可のない所有権の移転、貸借契約は効力が生じないため注意が必要です。この許可申請には費用はかかりません。

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